2023/12
2024年からデータ保存が義務化!電子帳簿保存法対応は大丈夫?
これまではあくまで「猶予期間」でした
電子帳簿保存法とは、帳簿書類の電子保存を目的とした法律です。施行自体は1998年とかなり古く、数回の改正が加えられて今に至ります。
本来、所得税法や法人税法では、帳簿書類は紙で保存するのが原則でした。あくまで、電子保存(データでの保存)は特例として許容されていたにすぎません。事実、当時の電子帳簿保存法に則り電子保存をするならば、事前に税務署に申請・承認をもらうなど煩雑な手続きが必要でした。そのため、従前の紙での保存をベースにした経理手続きを行う企業が大半を占めていたという事情があります。
しかし、2022年1月に改正電子帳簿保存法が施行されたことで、一気に潮目が変わります。改正法には「事前承認制度の廃止」「スキャナ保存制度の要件緩和」「電子取引のデータ保存が義務化」が盛り込まれていました。つまり、電子保存のハードルを一気に下げる代わりに、義務化するという方針が示されたのです。
ただし、これまで紙ベースでやり取りしてきた業務を一気に電子データベースにするのには、何かと手間がかかります。そのため、急遽2年間(2022年1月1日~2023年12月31日)の猶予期間が設けられました。
しかし、2024年1月1日からは猶予期間が終了するため、すべての企業で電子取引の電子データは、紙での保存が認められなくなります。
業務体制が整っているか改めて確認を
猶予期間が終了すると、電子取引の電子データは「データのまま保存」しなくてはいけません。準備がすでに整っているなら問題ありませんが、まだできていない場合は、少なくとも以下の点は確認し、対応を進めましょう。
まず、業務の中に電子取引に対応する取引がどれだけあるかを把握する必要があります。簡単にいうと「紙を介さない取引」であれば、電子取引と考えて構いません。わかりやすい例がメールに添付されたPDFファイル形式の請求書・領収書です。
次に、データの保存方法や場所を決めましょう。基本的にはどこで保存しても構いませんが、以下の4つの要件のうちいずれかを満たしていることが必要になります。
・ タイムスタンプが付与されたデータを受領する
・ 速やかにタイムスタンプを付与する
・ データの訂正や削除をした履歴が残るシステムまたは訂正や削除ができないシステムを利用する
・ 改ざん防止に関する事務処理規程を作って守る
保存方法が決まったら、おのずとシステムや規程の準備にも取り掛かれるはずです。なお、国税庁のWEBサイトには、電子データの訂正および削除の防止に関する事務処理規定など、電子帳簿保存法に関連する各種規程等のサンプルが掲載されています。税理士などとの専門家と相談のうえ、社内体制の整備にお役立てください。
2023/10
事業承継税制は税金が免除される制度。要件は厳しいので要注意
退任しないのは事業承継税制のせい!?
今年の9月、メディアを騒がせたニュースの1つにとある大手芸能事務所をめぐるスキャンダルがありました。これに伴い会見を行った芸能事務所の社長(創業者のめい)が引責辞任するかが注目されましたが、会見の時点では引退しないことになっています。その理由は公にはされていませんが、一つの理由として推測されたのが、事業承継税制です。
事業承継税制とは、後継者が先代から事業を承継し、将来的にその次の後継者に円滑に事業承継をさせられれば、納税を猶予されていた相続税および贈与税が免除される制度を指します。この制度を利用するためには、満たすべき要件がたくさんあるので注意しなくてはいけません。
まず、会社が資本金もしくは従業員数のいずれかの条件において中小企業者であると判定されれば利用できます。また、後継者は相続が発生してからから5ヵ月以内に代表取締役に就任しないといけないなど、先代経営者や後継者に関する条件も細かく定められています。
事業承継税制における5年ルールとは
既に触れた通り、事業承継税制はスタートの時点で細かい条件を満たしていないと利用すらできません。また、利用を開始してからも、最低5年間は以下のルールを守らないと、相続税・贈与税の猶予が打ち切られます。そのルールのうち、主要なものを列挙します。
後継者が会社の代表を辞任しないこと
後継者が会社の株式を保有し続けること
会社の雇用の8割を維持すること
なお「会社の雇用の8割を維持」という条件は、経営条件の悪化や正当な理由がある場合は満たせなくても構いません。極論、5年経過後は会社の代表を辞任しても、株式を売却しても構いませんが、次の代に事業承継が行えなかった場合は、相続税・贈与税の免除は受けられなくなります。
事業承継の方法によっても扱いが異なるので注意が必要です。まず、生前贈与で事業承継を行った場合は、再び事業承継税制を使って贈与すれば、相続税・贈与税が免除されます。また、相続が発生した場合は猶予されていた相続税・贈与税が免除されますが、次の代の後継者も事業承継税制を使いたい場合は、改めて申請しなくてはいけません。一方、贈与や相続ではなく、M&A(役員や第三者への株式の売却)で事業承継を行った場合は、相続税・贈与税の納税猶予は打ち切られます。
他にも、事業承継税制を利用する際は細かい条件を満たす必要があるため、利用を検討する場合は相続税・贈与税に精通した税理士に相談していただくのをおすすめします。
※参考にしたウェブサイト※
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/jigyo-shokei/houjin.htm
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0023006-133_01.pdf
https://osd-souzoku.jp/succession-business/
2023/09
免税事業者の個人事業主はインボイス対応すべき?経過措置とともに解説
2023年10月からインボイス制度が本格的にスタート
既に伝えられている通り、2023年10月1日からインボイス制度(適格請求書保存方式)が開始されます。簡単にいうと、一定の条件を満たす適格請求書発行事業者の登録を受けた課税事業者は、求められた場合インボイス(適格請求書或いは適格簡易請求書)の発行が義務付けられるという制度です。
つまり、免税事業者の場合、インボイスは発行できません。免税事業者がインボイスを発行するためには、適格請求書発行事業者として登録する必要があります。
ここで問題になるのが年間売上(正確には、前々年度の課税売上高)1,000万円以下の個人事業主です。本来、消費税の免税義務を免除されていますが、適格請求書発行事業者になると、課税事業者として期日までに消費税の申告を行い、納税する(還付を受けることもある)必要が出てきます。
そのため、インボイス制度が本格的に開始する前に課税事業者としてインボイスを発行できる登録事業者になるか、取引先に理解を求めて免税事業者を続けるかを決めなくてはいけません。
BtoCがメインならあえて登録しないのもあり
適格請求書発行事業者になるべきかは、どのような取引を行っているかによっても異なります。まず、BtoB=法人を中心に商品・サービスの提供を行っている場合、取引先から適格請求書発行事業者として登録するよう交渉があるかもしれません。応じない場合は、取引そのものを見直されて課税事業者に乗り換えられたり、消費税額分の値引き交渉を持ちかけられたりする可能性が出てきます。事務処理上の負担や納税額が増えるというデメリットと、取引先を失わないというメリットを比較衡量する必要がありそうです。
一方、BtoC=一般消費者を中心に商品・サービスの提供を行っている場合は、取引先が仕入税額控除を利用できないデメリットはそう大きくありません。あえて免税事業者のままでいるのも一つの考え方です。
なお、2023年10月1日以降6年間は、課税事業者は仕入税額控除の経過措置を受けることができます。つまり、免税事業者から仕入をした場合でも、最初の3年間は課税仕入につき80%を、次の3年間は50%を控除可能です。自社が「免税事業者と取引をする法人」である場合は、この制度を利用し、取引先が適格請求書発行事業者になるのをモニタリングするのも一つの方法です。
逆に「インボイス制度に伴って課税事業者になる元免税事業者」であるなら、2割特例の利用も視野に入れましょう。業種に関わらず売上税額の一律2割を納付するので、事務上の負担が大幅に減ります。
2023/08
【今更聞けない】税務調査の基本的な流れと注意点
税務調査=悪いことをしたではないから冷静に
会社を経営している限りは、いつかは税務調査を受けることがあるかもしれません。「うちの会社、何も悪いことしていないけど?」と不安になる気持ちはわかりますが、落ち着いて対応すれば問題ないので安心してください。
前提として、税務調査は大きく分けて任意調査と強制調査の2つに分かれます。このうち「悪いことをしたから税務調査」というのは、強制調査のことです。脱税など悪質な事案の疑いがある場合、国税局査察部の査察官が令状により強制的に証拠物件や書類を押収します。なお、査察官を俗に「マルサ」といい、言葉だけは聞いたことがある方も多いはずです。
一方、任意調査は納税者の申告内容を確認するために行われるもので、悪質な事案とは関係ありません。基本的には事前に連絡があり、日程の打ち合わせをしてから実際の税務調査に移ります。社内での準備や税理士とのすり合わせをする時間的猶予はあるので、落ち着いて対応しましょう。
税務調査の基本的な流れと注意点
税務調査の基本的な流れは以下の通りです。
1. 事前通知が行われる
2. 納品書や領収書など必要書類の整備を含めた事前準備を行う
3. 税務署職員による実地調査が行われる
実地調査の所要時間はだいたい2日間程度です。初日は経営者へのインタビューや売上に関する調査が行われます。2日目は初日の調査の続きに加え、帳簿関係の調査が行われるのが一般的です。申告内容に特に問題がなければ、申告是認の通知を受け取り、調査が終了します。
なお、税務調査が入りやすい会社にはある程度傾向があります。急速に売上や利益が伸びていたり、消費税の還付を受けていたりする場合は、税務調査のお知らせが来るかもしれません。また、過去の税務調査において不正が指摘されたり、申告内容に不審な点が多いと判断されたりした場合も当てはまります。
実際のところ、いつ税務調査が来るかは誰にも分かりません。普段から、申告書は細かいところまで記載し、記帳を確実に行いましょう。また、書面添付制度を利用するのも1つの方法です。これがあれば、税務調査に入る前に、税務署が顧問税理士に書面に基づいて意見聴取を行います。申告内容に問題がなければ調査が行われることもないため、非常に便利です。普段から顧問税理士とは積極的にコミュニケーションを取り、いざというときに慌てないようにしましょう。
2023/07
相続土地国庫帰属制度は「土地を国にあげられる制度」。背景とメリット・デメリットを解説
相続土地国庫帰属制度とは「土地を国にあげられる制度」
2023年、相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律が施行されました。この法律に基づき新たに生まれた制度が、相続土地国庫帰属制度です。
相続によって取得した土地が以下の条件に当てはまる場合に、相続人がこの制度の利用を国に申請し、承認されれば一定の料金を払い、土地を引き取ってもらえます。
1)相続や相続人への遺贈で取得した土地であること
2)土地が共有であるときは、共有者全員が共同して行うこと
3)一定の却下事由に該当する土地ではないこと
この制度が生まれた背景にも触れておきましょう。
相続によって得られる土地の利用価値はそれぞれに異なります。特に、地方部の土地は売ってもほとんどお金にならないほど価値が低く、管理の手間やコストを考えるとかえってマイナスになることもあるでしょう。
そのような土地は売ることもできず「相続したら自分で管理を続ける」しか選択肢がありませんでした。このような状況を打開するために生まれたのが、相続土地国庫帰属制度と考えましょう。
相続土地国庫帰属制度のメリット・デメリット
相続土地国庫帰属制度のメリットは、いらない土地だけを手放し、必要な土地は所有し続けられることでしょう。また、売却する場合と違い、国を相手にやり取りするので引き受け手を探す必要もありません。さらに、素性の分からない相手に土地を渡してしまい、反社会的行為に使われるリスクも避けられます。
一方、デメリットとしては、すべての土地に使えるとは限らない点が指摘できるでしょう。すでに触れた通り、相続土地国庫帰属制度は、一定の条件を満たさないと利用できません。
共有名義になっている場合は、共有者全員の同意が得られないと、手続きもできないことになります。また、手続きにあたっては費用を負担しなくてはいけません。
宅地の場合、原則として20万円がかかりますが、都市計画法における市街化区域または用途地域が指定されている宅地だった場合は、面積に応じて費用がかかります。土地の広さやロケーションによってはかなり自己負担が増えてしまうでしょう。
そして、始まって間もないため、この制度を使って国に土地を引き継ぐまでの所要期間がわからないのも実情です。
現実的には、現地調査なども必要になるため、数カ月から1年程度はかかると考えられています。相続で得た土地を手放すには、売却など他の方法も考えられるため、どの方法を使うべきかは税理士などの専門家に相談してみましょう。
2023/06
新型コロナ5類以降の今だからこそおさらいしたい交際費等の処理方法
取引先を交えても1人あたり5,000円以下なら損金算入OK
2023年5月8日から、新型コロナウイルス感染症の感染法上の分類が従来の「2類相当」から「5類」に移行しました。
個人の選択を尊重した自主的な取り組みをベースにした対応に変わったため、取引先や社員での会食・イベントの制限を撤廃する事業所も多いかもしれません。
仕事と直接関係ないとはいえ、コミュニケーションの一手段として有効なのは確かなので、上手に取り入れると良いでしょう。
なお、取引先を交えた食事であっても、予算が1人あたり5,000円以下の場合は全額を損金に算入できます。
書類に以下の5つの事項を記載し、保存しておいてください。
● 食事会をした年月日
● 得意先等相手先の氏名又は名称とその関係
● 参加者数
● 飲食費、飲食店名、その所在地
● その他飲食費であることを明らかにするために必要な事項
本来は別紙に整理して書くことが望ましいですが、難しい場合は領収書やレシートの裏面にメモしておきましょう。
交際費として扱うべき費用の条件を知っておこう
一方、取引先との飲食代が交際費等と判定される場合、原則として全額が損金不算入となります。実際は法人の区分に応じて一定の措置が設けられているものの、本来は交際費とすべき飲食代の扱いを誤ると、税務調査で指摘が入るでしょう。指摘されないようにするためには、どんな条件にあてはまる飲食代であれば、交際費になるのかを知っておきましょう。
まず「1人あたり5,000円以下」の判定方法です。基本的には飲食費用の総額を参加人数で割って判定しますが、この額が5,000円を超えた場合は全額を交際費等として扱います。
また、1次会と2次会など複数にわたり食事会をした時は、別の場所でそれぞれ単独で行われていれば、別々に判定することが可能です。消費税については、税込経理を用いているなら税込、税抜経理を用いているなら税抜で判定します。
なお、長時間の会議の合間に昼食としてお弁当やお茶を出すこともあるかもしれません。このような場合は、1人あたりの予算が5,000円を超えていても交際費等には該当しない点にも注意しましょう。
次に、どんな食事会であれば取引先との会食に当たるのかを解説します。争点となるのは「取引先の担当者など社外関係者が参加しているか」です。
社内の従業員などが多数参加していても、1人でも社外関係者が参加していれば交際費等となります。取引先が親会社など資本関係があるケースだったとしても、組織としては別物であるため社外関係者として扱われる点に注意しましょう。
実際のところ、どのような飲食代であれば交際費等に当たるのかは、個々の事例に基づいて判定しなくてはいけません。判定が難しい場合は社内だけで対処せず、税理士などの専門家に聞いてから対応を進めましょう。
2023/05
免税事業者の取引先に課税転換を求めるときは要注意。法律上問題となる3つのケース
免税事業者だと消費税相当額を買い手が負担することになる
2023年10月1日からインボイス制度(適格請求書等保存方式)が実施されます。
仮に、取引先の企業が免税事業者で、適格請求書発行事業者の登録をしていない場合は、その取引先からの課税仕入れに関し、仕入税額控除の適用を受けることはできません。
簡単にいうと「免税事業者からモノ・サービスを購入した場合、消費税相当額を買い手が負担する」ことになります。
このような事情があるため「できることから、取引先に課税事業者になってほしい」と思う事業主は決して少なくないはずです。
取引先と交渉をし、できる限りお互いにとってよい方向に向かうよう条件を合わせること自体は問題ありませんが、やり方次第では法律上問題となるので注意してください。
具体的なケースとして独占禁止法上問題になるケースと、下請法違反になるケースを紹介します。
独占禁止法、下請法問題にならないよう配慮を
まず、独占禁止法上問題になるケースの具体例は「課税転換に承諾しないと取引を打ち切ることをほのめかし、要請にあたっての価格交渉にも応じなかった」ことです。
課税事業者になることを要請すること自体は問題ありませんが、一方的な通告にならないよう、注意しなくてはいけません。
次に、下請法上問題になるケースの具体例を紹介します。
まず「取引完了後に取引先が免税事業者であると判明したため、請求書の額にかかわらず、消費税相当額の一部または全部を支払わなかった」ケースです。
これは、下請法第4条第1項第3号で禁止されている「下請代金の減額」にあたるため注意が必要です。
また「取引先が免税事業者から課税事業者になり価格交渉をしてきたものの、それに応じず一方的に単価を据え置くことにした」場合も、下請法第
4条第1項第5号で禁止されている「買いたたき」として問題になります。
ここで紹介したのは代表的なケースにとどまるので、実際に法律上問題になるかは、個々の事例を見て判断しないと断言できません。
免税事業者である取引先が多い場合は、どのように交渉を進めればトラブルにならないかを考える必要があります。
また、自社が免税事業者である場合も、不利な条件を提示された場合の対処法を知っておくとよいでしょう。
トラブルが起きそうな場合は、税理士や弁護士などの専門家と連携を取りつつ、どのように進めるか考えるのをおすすめします。
2023/04
インボイス制度は売上1,000万円以下なら3年間軽減措置を利用可能へ
売上1,000万円以下なら3年間軽減措置を利用可能へ
2023年10月から、適格請求書保存方式=インボイス制度がスタートします。簡単にいうと、適格請求書がないと仕入税額控除が適用されなくなる制度のことです。
そして、適格請求書は適格請求書発行事業者でないと発行できません。なお、適格請求書発行事業者になるためには、消費税の課税事業者である必要があります。
売上が1,000万円を超えているなら課税事業者になるため問題ありません。しかし、1,000万円以下の場合は課税事業者となり、適格請求書発行事業者として登録しなくてはいけません。このような背景があるため、これまで消費税の納税義務がなかった事業者でも、インボイス制度の開始により消費税を納めなくてはいけなくなることから、反発も相次いでいました。
そこで、令和5年度税制改正により導入されたのが、売上1,000万円以下の事業者に対する軽減措置です。
売り上げが1000万円以下の事業者が「課税事業者」になった場合、仕入などで払った消費税がいくらであろうと、売上にかかる消費税のうち、一律で2割だけ納めるという形になっています。
例えば、売上が900万円だった場合、売上にかかる消費税90万円のうち、20%にあたる18万円だけ納めればかまいません。
なお、この軽減措置は2023年10月の制度開始から3年間適用されるとのことです。
2023年4月以降もスムーズに登録可能に
インボイス制度がスタートすると、免税事業者であっても消費税を払わなくてはいけないため、登録を迷っていた事業者もいるはずです。制度開始のタイミングに合わせて登録を受けるためには、2023年3月31日まで申請書を提出しなくてはいけませんでした。2023年4月以降に申請書を提出する場合は「困難な事情」の記載が必須となっていましたが、この扱いも税制改正により緩和されています。
また、年間売上1億円以下の事業者の場合、仕入額が1万円未満であれば、インボイスは不要とする措置が2023年10月から6年間実施されることになりました。このように、免税事業者であっても、インボイス制度を見据えて課税事業者に移行しやすくする措置が取られています。
現在、免税事業者で、課税事業者への移行を迷っている場合は、前向きに検討しても良いでしょう。
実際に制度がスタートすると、会計ソフトのアップデートや社内体制の構築など、やるべきことがたくさん出てきます。
税理士などの専門家に相談し、疑問点を解消しながら進めましょう。
2023/03
【いまさら聞けない】ふるさと納税の手続きの流れと注意点をおさらい
ふるさと納税の基礎と手続きの流れ
ふるさと納税とは、都道府県や市区町村などの地方自治体に寄附ができる制度です。厳密にいうと、税金というよりは寄附金の一種と考えましょう。米や肉、魚などの食品やティッシュペーパーなどの生活雑貨、日本酒やワインなどの嗜好品が返礼品として受け取れることから、節約を心掛けている家庭でも人気があります。
なお、ふるさと納税の基本的な流れは以下の通りです。
1. 自身の控除限度額を調べる
2. 寄附する自治体と返礼品を決める
3. 寄附の申込をする
4. 自治体から返礼品と書類を受け取る
5. 税金控除の手続きをする
ここで問題になるのが税金控除の手続きをすることです。自営業やフリーランスなど、自身で確定申告を行う場合は、寄附金控除の適用を受ける前提になります。自治体から受け取った書類を使って確定申告書を作り、期限内に提出すればかまいません。
一方、会社員などの給与所得者で確定申告をする予定がない場合は、ワンストップ特例制度を使うと便利です。自治体に以下の3つの書類を添えて申請すれば利用できます。
● 寄附金税額控除に係る申告特例申請書
● 個人番号(マイナンバー)
● 寄附金控除申請をする本人の確認ができる書類
なお、寄附金税額控除に係る申告特例申請書はふるさと納税をする際に使用したポータルサイトから手続きをして送ってもらうことが可能です。
自分で総務省のWebサイトからダウンロードし、必要事項を記入して送っても構いません。
ふるさと納税の注意点とメリット
ふるさと納税は、さまざまな返礼品が受け取れるという点で人気を博していますが、注意すべき点がいくつかあります。
まず、ふるさと納税を使っても節税にはなりません。あくまでも、ふるさと納税は寄附金控除の一種であり、2,000円の自己負担を超えた寄附金額を所得税や住民税から控除する制度に過ぎないためです。
たとえば、3万円の寄附をし、自治体から返礼品を受け取ったとします。この場合、住民税・所得税から28,000円が控除されますが、これはあくまで「自分が住んでいる自治体に払うはずの税金を寄附先の自治体に払った」に過ぎません。支払うべき税金の総額が変わるわけではない点に注意が必要です。
また、すでに触れたとおり、確定申告やワンストップ特例制度を使わないと、寄附金控除は受けられません。手続きを忘れずに済ますのがポイントになります。
一方で、ふるさと納税にはメリットも数多くあります。やはり、好きな返礼品を受け取れることに魅力を感じ、ふるさと納税をする人は少なくありません。希少価値の高いワインや招待制のイベントなど、他では手に入らないものを返礼品にしている自治体もあり、人気を博しています。
また、自分の生まれ育った街など、ゆかりのある自治体を応援できるのも魅力です。なかなか現地には行けなくても、応援しているという気持ちを表現する手段としても使えます。
ただし、税務上扱いに注意が必要なのも事実なので、不明な点がある場合は、税理士などの専門家に聞きながら進めましょう。
2023/02
生前贈与加算が3年から7年に延長!令和5年度税制改正で何が変わる?
生前贈与加算について改めておさらい
2022年12月16日に、令和5年度税制改正大綱が発表されました。相続税や贈与税に関しても、さまざまな改正論点が提起されています。そこで今回は、特に押さえておくべき論点として、生前贈与加算の扱いの変更について掘り下げましょう。
生前贈与加算とは、亡くなる前3年以内に、亡くなった人(被相続人)から遺族(相続人)が贈与を受けていた場合、相続人の相続税課税価格に贈与額を加算する規定を指します。
なお、以下の財産については、たとえ被相続人が生前に贈与していたとしても、加算の対象にはなりません。
● 贈与税の配偶者控除の特例の適用を受けているまたは受けようとする財産のうち、その配偶者控除額に相当する金額
● 直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金のうち、非課税の適用を受けた金額
● 直系尊属から一括贈与を受けた教育資金のうち、非課税の適用を受けた金額
● 直系尊属から一括贈与を受けた結婚・子育て資金のうち、非課税の適用を受けた金額
そもそも、この規定は被相続人が生前に贈与をたくさん行い、相続税の負担を逃れようとするのを防ぐために設けられました。
「亡くなる前7年以内に」が生前贈与加算の対象へ
令和5年度税制改正大綱では、生前贈与加算の規定に関しても変更が加えられています。
すでに触れた通り、生前贈与加算は亡くなる前3年以内に贈与を受けた財産を対象にした規定でしたが、これが7年以内に延長されました。
なお、相続開始前4~7年の間に取得した財産については、当該財産の価額の合計額から100万円を控除できます。注意したいのは、1年間で100万円ではなく、4年間で100万円です。
控除できる額としてはあまり大きくないので、節税効果もあまり高くないことが予想されます。
また、今回紹介した生前贈与加算の期間延長が実際に適用されるのは2024(令和6)年1月1日以降の贈与からです。つまり、今後数年はいつ亡くなったかによって生前贈与の加算期間が異なる可能性が出てきます。
わかりやすくするために整理してみました。
● 2027(令和9)年:最長4年間加算
● 2028(令和10)年:最長5年間加算
● 2029(令和11)年:最長6年間加算
● 2030(令和12)年:最長7年間加算
● 2031(令和13)年:7年間加算
この改正により、相続財産が増えることになるため、これまで相続税が発生しなかったケースでも、今後は発生してくる可能性が出てきます。「自分たちは相続税を払わなくてはいけないのか」「払うとしたらどれぐらいになるのか」と言った疑問がある場合は、まずは税理士に相談しましょう。
2023/1
コロナと確定申告。独立した場合と保険金を受け取った場合の扱いは?
会社を辞めてフリーランスになった場合の税務上の扱いは?
新型コロナウイルス感染症の流行も3年目に突入しました。初期のような強力な行動制限はなくなってきているものの、まだまだ注意して暮らすに越したことはありません。その中で、生活に変化があった人も決して少なくはないでしょう。
ここでは「コロナで生活が変わった人」の例として、1)会社を辞めてフリーランスになった、2)新型コロナウイルス感染症に罹患し保険金を受け取った人の2パターンについて、税務上の扱いを確認します。
まず、会社を辞めてフリーランスになった人の場合、確定申告をどうするのかが問題になります。仮に、6月30日まで会社勤めをし、7月1日からはフリーランスとして仕事を始めた場合を考えてみましょう。
6月末までは給与所得を、7月以降は事業所得を得ていたことになるため、確定申告の際はこの2つを合算して所得税を計算しなくてはいけません。また、給与から源泉所得税が天引きされていれば、事業所得と合わせて計算した所得税から控除することが可能です。
たとえば、6月末までの給与から、源泉所得税が10万円差し引かれていたとしましょう。すべての所得を合算して計算した年間の所得税が20万円だった場合、確定申告の段階で納めるべき所得税は10万円となります。
なお、このパターンの場合、確定申告にあたっては源泉徴収票が必須です。紛失してしまった場合は、元勤務先に問い合わせて送ってもらいましょう。
新型コロナウイルス感染症に罹患し保険金を受け取った場合の税務上の扱いは?
新型コロナウイルス感染症に罹患し、加入している生命保険や医療保険から保険金や給付金を受け取った場合の税務上の扱いについても確認しておきましょう。結論からいうと、非課税所得となるため、税金はかかりません。「心身に加えられた損害または突発的な事故により資産に加えられた損害に基づいて取得する保険金、損害賠償金、慰謝料」として扱われるためです。
ただし、保険金や給付金の受取人が亡くなってしまい、相続人が代わりに受け取った場合は、相続税の対象になります。
また、医療費控除の計算方法についてもチェックしておきましょう。新型コロナウイルス感染症への罹患に伴いかかった医療費も、医療費控除の対象です。ただし、医療費控除の対象にできる医療費は「治療や療養のために自己負担した金額のみ」であるため、保険金や給付金を受け取った場合は、差し引かなくてはいけません。
ここで注意したいのが「補てんされる金額を差し引くのは、あくまでも給付の原因となった治療・療養のみ」というルールです。
分かりづらいので、例を用いて説明します。
【例】
新型コロナウイルス感染症でかかった医療費(抗原検査キットや解熱剤の代金も含む):3,000円
受け取った給付金:5万円
その他の医療費:15万円(※これらに伴い、保険金・給付金は受け取っていない)
この場合、新型コロナウイルス感染症にかかる医療費は0円になり、医療費控除にあたって自己負担した医療費の合計は15万円として扱われる仕組みです。
ここで紹介した税務上の扱いは、知ってしまえばさほど難しいものではありません。しかし、自分ではなかなか判断しづらいと感じた場合は、税理士などの専門家に確認しておくと安全です。