コラム 2020年

2020/12

新型コロナウイルス感染症は確定申告にも影響。最低限確認すべきポイントを解説

令和元年分の対応をまずはおさらいしよう

2020年に入り、中国で発生した新型コロナウイルス感染症は、日本を含めた世界中に波及しています。フランス、アメリカのように大規模な外出禁止令が敷かれたわけではありませんが、日本でも「外出しないこと」を前提にした対応が求められたのは事実です。

国税庁も例外ではなく「外出できなくても問題がないようにする」という方向で、調整を図っていました。例えば、令和元(2019)年の確定申告については

・ 本来の期限は令和2(2020)年3月16日であったところ、1カ月延長して4月16日にした
・ 4月17日以降であっても、税務署への申請により、確定申告書の提出を受け付けることにした

など、例年では考えられないほど、柔軟な対応がなされています。

また、申請についても、所定の書類や医師による診断書が必要になるわけではありませんでした。申告書を提出する際に、その余白に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」といった文言を付記すればいいだけです。なお、e-Taxを使っていた場合は、所定の欄にその旨を入力するだけでした。

「外に出ない」方法で対応しよう

令和2年度の確定申告についても、令和元年度と同じような対応がなされるのかは、まだわかりません。冬を迎え、新型コロナウイルス感染症の感染者がまた増加し始めている現状を考えると、あり得ない話ではありませんが、ここは国税庁の公式発表を待つしかないでしょう。

従来は、確定申告というと、税務署に書類を持参したり、銀行に出向いて振込をしたりなど「外に出て行う」のが基本の手続きでした。

しかし、今では

・ パソコンで申告書を作って郵送する
・ e-Taxを使う
・ インターネットバンキングやクレジットカードで納付する

など、外に全く出ないか、出たとしても家の近所のコンビニエンスストアだけで用が足りるほど、確定申告の手続きも便利になっています。このような方法を取り入れるのも、感染症対策の1つです。

まずは早めの相談を

確定申告との関係において、新型コロナウイルス感染症は災害の1つとして扱われています。そのため、本来は災害その他やむを得ない理由のやんだ日から2カ月以内に申請を行わなくてはいけません。

つまり、確定申告書もこのタイミングで提出しないといけないのですが、提出すると同時に納税の義務が生じます。しかし、手元に資金がないなどの理由で納税することが厳しい場合は、早めに各国税局の国税局猶予相談センターに相談しましょう。     

2020/11

2020年1月1日から基礎控除は10万円アップ。それでも減税にならない人がいるのはなぜ?

2020年1月1日から基礎控除は10万円アップ

基礎控除とは、所得税や住民税の計算をするときに、所得(収入ー費用)から一律で差し引かれる金額のことをいいます。計算にあたって差し引かれるため、基礎控除の額が大きくなれば、結果として支払うべき税金も安くなるのです。

従来、この基礎控除は合計所得金額がいくらであったとしても、一律の金額(所得税の場合は38万円、住民税の場合は33万円)が適用されていました。しかし、2020年1月1日からは、合計金額が2,400万円以下であれば所得税は48万円、住民税は43万円の基礎控除が受けられるという決まりに変わったのです。

その一方で

・ 合計所得金額が2,400万円超2,450万円以下の場合は、所得税は32万円、住民税は29万円
・ 合計所得金額が2,450万円超2,500万円以下の場合は、所得税は16万円、住民税は15万円
・ 合計所得金額が2,500万円超の場合は適用なし

というように、所得金額が上がれば上がるほど、基礎控除は少なくなり、最終的にはゼロになるという改正がなされたのです。


基礎控除が上がったのに減税にならないのはなぜ?

既に触れたように、基礎控除は合計所得金額が2,400万円以下であれば引き下げられることになりました。これと同時に、給与所得控除額についても、以下のように変更がなされています。

給与等の収入金額:給与所得控除額

・ 1,625,000円:550,000円
・ 1,625,001円から1,800,000円まで:収入金額×40%-100,000円
・ 1,800,001円から3,600,000円まで:収入金額×30%+80,000円
・ 3,600,001円から6,600,000円まで:収入金額×20%+440,000円
・ 6,600,001円から8,500,000円まで:収入金額×10%+1,100,000円
・ 8,500,001円以上:1,950,000円(上限)

このうち、給与等の収入金額=年収が850万円以上のケースについて見てみましょう。
従来、年収が850万円超1,000万円以下の人については、給与所得控除額は「収入金額×10%+120万円」という式で計算されました。

例えば、年収が900万円だった場合、給与所得控除額は210万円(900万円×10%+120万円)となります。しかし、改正後は195万円にまで下がるのです。

給与所得控除額が下がるということは、差し引ける金額が少なくなるため、結果として支払うべき税金が増えます。基礎控除額が引き上げられたことで、一見すると減税されたようにも思えますが、実際のところは、増税になるケースもあることを覚えておくといいでしょう。     

2020/10     

知っていそうで知らないふるさと納税の基本を解説!

ふるさと納税とは

本来、税金は国か自分の住んでいるところ(都道府県、市区町村などの自治体)に対して納めるものです。しかし、ふるさと納税を行うことで、自分や家族の出身地、そのほかの縁がある場所に対して税金を納めることができます。ただし、名前に「納税」とあるものの、実態は寄付に近いと考えましょう。つまり、任意(自分が住んでいなくても可能)の自治体に寄附をし、その寄付金額を現在住んでいる自治体に対して申告を行い、寄附分を控除するという仕組みです。

ふるさと納税のメリットとしてはは、1)返礼品がもらえる、2)税金が控除(還付)される、3)寄付金の使い道を指定できる、の3つが挙げられます。まず、1)についてですが、肉・魚・米・お酒・お菓子などの食品やその地域の名産品はもちろん「お墓の掃除代行サービス」などのユニークなものを設けている自治体もあります。2)については既にふれた通りです。

また、3)については「若者の移住、定住、就業を応援する事業」「地震、台風などの災害からの復興」「高齢者福祉・児童福祉の充実」など、自治体によって様々な目的が設けられています。自分の考えに最も合う目的を掲げている自治体を選び、ふるさと納税を行うのも1つの考え方です。

確定申告とワンストップ特例制度の違いを知ろう

なお、実際にふるさと納税を行うには、いわゆるポータルサイトを利用し、オンラインショッピングをする際と同じような操作で手続きを行うのが一般的です。これ自体は何ら難しくありませんが、問題なのは「どうやって税金控除の手続きをするか」でしょう。確定申告をするのか、ワンストップ特例制度の適用を受けるのか、選択しなくてはいけません。

まず、フリーランスや経営者など、確定申告をするのが前提の職業であれば、確定申告の際に一緒に自治体から交付された寄付金受領証明書を、確定申告書類と一緒に提出しましょう。これにより、所得税からの還付と、住民税からの控除が受けられます。なお、この場合、寄付をした翌日の3月15日までに提出しなくてはいけません。

一方、サラリーマン、OLなど「どこかに勤めて給料をもらっている人=給与所得者」であれば、ワンストップ特例制度を使うのもいいでしょう。これは、寄付の都度、各自治体に申請書および本人証明書類を提出することで、住民税からふるさと納税による寄付額のうち、2,000円を超える部分を控除してもらえるという制度です。

ただし、この方法によった場合、1年間で寄付できる自治体は5つまでになります。また、申請書も寄付をした翌年の1月10日に必ず自治体に届いていないといけないので、年末にまとめてふるさと納税をした場合は間に合わないかもしれません。スケジュールには注意しましょう。    

2020/09

テレワーク導入には中小企業強化税制も活用可能。専門家と相談し、利用を検討すべき

新型コロナはテレワーク導入の追い風になるか 

業種や企業の風土にもよりますが、日本は諸外国に比べると比較的「出社して顔を突き合わせて仕事をすること」に重きが置かれている文化です。そのため、今までテレワーク(在宅勤務、モバイルワーク、サテライトオフィス勤務など)の導入はあまり進んできませんでした。総務省の平成29年通信利用動向調査によると、日本企業におけるテレワークの導入率は13.9%でした。
そのうち、在宅勤務の導入率は29.9%、モバイルワークの導入率は56.4%、サテライトオフィスの導入率は12.1%と、モバイルワーク以外のテレワークを導入している会社は、ごくわずかだったのです。

参照:総務省|平成30年版 情報通信白書|広がるテレワーク利用
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd144310.html#:~:text=%E7%B7%8F%E5%8B%99%E7%9C%81%E3%81%AE%E5%B9%B3%E6%88%9029,%E3%81%AF12.1%EF%BC%85%E3%81%A7%E3%81%82%E3%82%8B%E3%80%82

しかし、2020年に入り、日本を含めた全世界で新型コロナウイルス感染症が流行したことから、従業員の感染防止の名目で、在宅勤務を中心にしたテレワークの導入に踏み切る企業が出てきました。
それでも、実際にテレワークを実施した会社は、全体の3割にも満たなかったのです。

出典:緊急事態宣言の発令後、テレワーク実施27% 民間調査、「通常出勤」53% :日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO58375660S0A420C2TJ1000/

中小企業強化税制が改正され、テレワークの導入にも活用可能に

テレワークを導入しない理由として

顧客情報を扱うなど、機密保持が求められるのでテレワークへの移行が難しい
社内に導入に対応できる人材がいない
テレワークの導入は検討しているが、予算の面で折り合いがつかない
そもそも、販売、サービス業など「テレワーク」という概念が存在しない業種である

などが考えられます。最後のケースの場合は、さすがに導入のしようがありません。しかし、他の3つのケースのように、セキュリティ、人材、予算の面で折り合いがつく見込みがあるなら、テレワークを導入し、従業員や取引先の感染拡大防止に努めるのも、企業が果たすべき社会的責任の1つでしょう。

そこで活用してほしいのが、中小企業強化税制です。これは、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき、一定の設備を取得や製作等した場合に、即時償却又は取得価額の10%の税額控除(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)が選択適用できる制度ですが、従来から対象となっていた生産性向上設備(A類型)、収益力強化設備(B類型)に加え、デジタル化設備(C類型)も対象となりました。つまり、テレワークの導入のために必要なシステムの整備を行うと、即時償却または取得価格の10%(または7%)の税額控除が受けられるということです。

実際にテレワークを導入し、中小企業強化税制の適用を受けるには、システム会社や税理士と連携し、自社に合った形で進めていく必要があります。「うちもテレワークを導入しよう」と思ったら、まずは相談してみましょう。

参照:中小企業庁:テレワーク等を促進するために中小企業経営強化税制が拡充されました
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/2020/200501kyoka.html

 2020/08    

人がずっと住んでいない空家は要注意。空家の固定資産税について解説

空家にかかる税金は?

一戸建て、マンション、土地などの不動産を所有していると、固定資産税や都市計画税がかかります。そして、この2つの税金はその年の1月1日時点の所有者が支払わなくてはいけません。たとえ「今、住んでいない」空家であったとしても、支払い義務を免れることはないので注意しましょう。

また、固定資産税や都市計画税には「住宅用地の特例」という制度があります。人が生きていく上で、家は必要不可欠なものです。当然、住んでいる家にも固定資産税や都市計画税はかかりますが「生きていくのに必要なものだから」という意味もあり、人が住むための住宅については、固定資産税・都市計画税が安くなります。

より正確にいうと、住宅用地に対する固定資産税は最大で1/6、都市計画税は1/3まで減額されますが、平成26年度まではすべての住宅について適用が受けられました。しかし、平成27年度からは特定空家等への適用がなくなったのです。

特定空家とは

2015年5月26日に施行された「空家等対策特別措置法」で、特定空家について以下のように定義されています。

「特定空家等とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態、その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう」

つまり、簡単にいうと「管理が行き届いておらず、人が到底住めそうにないボロボロの空家」と考えましょう。平成26年まではどんなに状態の悪い空家であっても、建っている限りは住宅用地の特例の適用が受けられました。しかし、平成27年以降は、特定空家に指定されてしまった場合は、特例の適用が受けられません。

もちろん、特定空家といっても、状態は様々です。植え込みを刈り取ったり、ドアを修理したりするなど必要な処置を行えば、特定空家の指定が取り消されることもあります。取り消されればもちろん、住宅用地の特例を受けることは可能です。

また、必要な処置を行う予定なら、できれば特定空家に指定されたのと同じ年のうちに対応を済ませましょう。特定空家の認定の取消が翌年の1月2日以降にずれこむと、翌年分の固定資産税と都市計画税は高い税率が適用されてしまうので、気を付けてください。     

     

2020/07

マイナンバーカードを使って25%還元!マイナポイントを徹底解説

本来は東京オリンピックのあとの景気刺激策だった

2020年9月から、マイナポイント事業が開始されます。これは本来は、2020年6月に終了するキャッシュレス・消費者還元事業や2020年7月に開催されるはずだった東京オリンピックの終了後の景気刺激策として考えられていたものです。しかし、2020年2月ころから全世界で流行し始めた新型コロナ感染症の影響により、東京オリンピックは延期されました。
 「東京オリンピック終了後の景気刺激策」という本来の目的からは外れてしまいましたが、別の意味でマイナポイントには注目すべき点があります。1)マイナンバーカードの所持率の向上、2)キャッシュレス決済への関心、の2点です。
 まず、1)についてですが、2020年4月時点でのマイナンバーカードの所持率は16%にとどまっています。制度開始(2016年)から約4年たつにも関わらず、このような低い水準にとどまっている理由の1つには「マイナンバーカードを持つ具体的なメリットがわかりにくい」ことがあるでしょう。そのため、具体的なメリットを打ち出す施策の1つとして、マイナポイント事業がとらえられるはずです。
 また、2)についてですが、キャッシュレス決済は現金を触らずに、店員とのやり取りも最低限にして決済ができる方法です。そのため、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い厚生労働省が発表した「新しい生活様式」においても、キャッシュレス決済の利用は推奨されています。

マイナポイントに参加するには?

実際にマイナポイントに参加するためには、どうすればいいかを解説しましょう。まずは、マイナンバーカードとスマートフォンを用意します。スマートフォンに専用のアプリをインストールし、マイナンバーカードを読み取らせたあと、パスワードを入力すれば完了です。この手続きを「マイナポイントの予約」といいます。なお、各市区町村の対応窓口やケータイキャリアショップ、コンビニのマルチメディア端末でも手続きができるので、自分でできそうにない人は活用しましょう。
 次に、2020年7月に入ると、マイナポイントの予約が開始されます。アプリからマイナポイントの公式サイトにアクセスし、自分が利用したいキャッシュレス決済サービスを1つ選びましょう。そして、2020年9月に入ると、マイナポイントを決済サービスで利用できるようになります。選んだ決済サービスにチャージしたり、支払いを行ったりすると、利用額の25%のポイント、残高が付与される仕組みです。なお、マイナポイント事業は2021年3月31日まで実施されますが、この間に付与されるポイント、残高の上限は5,000円までとなっています。     

2020/06

「パナマ文書」がなぜ大騒ぎ?タックスヘイブンの問題点を解説

数年前「パナマ文書」という言葉が、日本を含め世界のニュースになりました。簡単に言うと、パナマの法律事務所が作成した世界の企業や個人によるタックスヘイブン(租税回避地)の利用実態が記載された文書です。しかし、この文書がきっかけで、当時のアイスランドのグンロイグソン首相は辞任に追い込まれるなど、各国で富裕層の租税回避を追及する動きが加速しました。今回は、タックスヘイブンについて、改めて振り返ってみましょう。

なぜ、企業や富裕層はタックスヘイブンを使うの?

タックスヘイブンとは、国際金融取引を円滑に行うため、法人税などの税金の一部が完全に免除される国や地域のことを指します。日本語では租税回避地と言います。有名なところでは、パナマ、バージン諸島、ナウルなどがこれにあたるでしょう。
タックスヘイブンを租税回避のために使う仕組みは、簡単に言うと「タックスヘイブンに会社を設立し、その会社を通じて税務申告を行えば、法人税などの税金がただになる」ということです。
会社を設立するといっても、現地に事務所を置くわけではなく、専用の私書箱を置いて済ませ、その管理も代行業者に任せる場合がほとんどでしょう。まさに「租税回避だけのためにタックスヘイブンに実体のない会社=ペーパーカンパニーを設立する」と言って過言ではありません。
つまり、企業や富裕層は、毎年支払う税金を節約するために、タックスヘイブンを使って租税回避を行う場合もあると考えましょう。

タックスヘイブンの何が問題なの?

そもそも、タックスヘイブンができたのは「世界中から企業に進出してもらうため」でした。パナマ、ケイマン諸島、ナウルなどタックスヘイブンとして知られる国・地域は、もともと「産業や資源のない国」である場合が多いです。そのような地域で産業を盛り立てるためには、海外の企業に自分たちの国・地域でビジネスをしてもらうしかありません。そのための方法の一環として、税金を免除し、海外の企業が進出しやすくしたのです。
しかし、海外の企業が進出しやすくなった一方、別の弊害が生まれました。マネーロンダリングに悪用されるようになったのです。マネーロンダリング(資金洗浄)とは「麻薬・覚醒剤の密売、詐欺など犯罪行為により稼得した資金を架空または他人名義の金融機関口座などを利用し、転々と送金を繰り返したり、株や債券を購入したりするなどして資金の出所をわからなくする」ことをいいます。
タックスヘイブンに設立されたペーパーカンパニーに関しては、情報が開示されてない場合がほとんどです。そのため、司法当局の監視もかいくぐりやすいことから、マネーロンダリングに悪用されているのが実情でしょう。
もちろん、タックスヘイブン自体は違法なものではありません。また、日本も含めた世界各国の企業・富裕層が使う分にも、自国で正しく納税さえしていれば何ら問題はありません。
ただし、情報が開示されておらず、犯罪の温床にもなりやすいことから、タックスヘイブンに指定されている地域の監視は注意深く行っていく必要があります。

2020/05   

キャッシュレス還元終了後はキャッシュレスを続けるべき?続けるメリットとデメリットをまとめてみた

2019年10月から始まった「キャッシュレス・消費者還元事業」。これは本来、2020年6月までの期間限定の事業でした。しかし、この事業が導入されることをきっかけに、今まで現金決済しかできなかったお店や会社(=事業所)にも、キャッシュレス決済ができる機材が導入されるのは珍しくなくなりました。

そこで「キャッシュレス・消費者還元事業が終了した後はキャッシュレスを続けるべき?」という疑問に対し、続けるメリットとデメリットを踏まえた上で、考えてみましょう。

1.キャッシュレスを続けるメリット

最初に、キャッシュレスを続けるメリットとして1)機会損失を減らす、2)衛生上の観点からも歓迎される、の2点を解説します。

1-1.機会損失を減らす

キャッシュレス決済のメリットとして「手持ちの現金がなくても支払いができる」ことが挙げられます。そのため、防犯上の観点から高額の商品をキャッシュレス決済で購入する人は少なくありません。また、通信販売など対面取引を伴わない場合も、銀行口座への振込に比べて手数料や手間がかからないことから、キャッシュレス決済を選択する人は多いです。それにも関わらず、現金決済以外受け付けていないとすると「あのお店は現金しか受け付けてくれないから」と、避けられる要因になりかねません。「キャッシュレス決済ができないためお客さんを取りこぼす」という機会損失を避ける意味で、キャッシュレス決済の導入は有効でしょう。

1-2.衛生上の観点からも歓迎される

2020年に入って世界的に大流行している新型コロナウイルスによる感染症は、私たちの生活に大きな変化をもたらしました。その中の1つが「現金を素手で取り扱うことのリスク」です。大手都市銀行の支店で現金の集計を伴う業務に従事していた行員が新型コロナウイルスに感染したという報道がなされたことで、「現金を扱うこと」に対し、心理的な抵抗を覚える人が出てきたのも事実でしょう。このため、今まで支払いに現金を使っていた人でも、クレジットカードなどのキャッシュレス決済に切り替えているのは珍しくありません。キャッシュレス決済の機会を保つことは、衛生上の観点からも歓迎されるでしょう。

2.キャッシュレス決済のデメリット

一方、現状においてキャッシュレス決済を導入している事業者にとってのキャッシュレス決済のデメリットとして挙げられるのが「手数料の高さ」です。この点についても解説しましょう。

2-1.手数料負担と便利さはトレードオフ

利用しているキャッシュレス決済業者によっても差はありますが、キャッシュレス決済を利用していくには、毎月所定の手数料を支払わないといけません。つまり、その分利益が減ることになるので、資金が潤沢でない中小事業者にとっては、毎月の手数料負担にどれだけ耐えられるかが、キャッシュレス決済を続けるかどうかの判断の分かれ目になります。裏を返せば、キャッシュレス決済を導入したら売上が劇的に上がったなど、目に見えた効果がない場合は、手数料負担も考えて取りやめるのも1つの選択肢になり得るでしょう。

2020/04     

相続は税理士に相談して進めるのがベストな3つの理由

相続税の申告は自分でもできるけど

大切な人を見送った後にやらなくてはいけないことは、実はかなり多いです。もちろん、相続税の申告も、その中に含まれるでしょう。
正直なところ、相続税の申告=相続税をいくら支払わなくてはいけないか計算し、期限までに書類を出して、実際に納めるべき金額を払うこと自体は、税理士に頼まなくてもできます。しかし、実際は税理士に頼んだ方が、自分でやることを大幅に減らせるうえに、後々トラブルにもなりにくいのです。そこで今回は「相続は税理士に相談して進めるべき」理由について解説します。

理由1.税務調査の対象になりにくい

相続税の申告書には「作成税理士の事務所所在地・署名押印・電話番号」の記入欄があります。つまり、申告書の作成を依頼した税理士の情報がここに書き込まれるわけです。
そのため、この欄に何も書かれていないと「税理士が関与していないから、情報が間違っているかもしれない」という疑念を税務署に与えます。当然、税務調査の対象にもなりやすいので何かと面倒です。

理由2.添付書類が揃わないこともある

相続税には「配偶者控除」「小規模宅地の特例」など、結果として相続税として支払うべき金額を低くできる控除・特例がたくさん設けられています。しかし、これらの控除・特例を使うためには、必要な書類を漏れなくそろえ、申告書と一緒に提出しなくてはいけません。
ほとんどの人にとっては「どんな書類をいつまでにそろえなくてはいけないか」をすべて把握するのは至難の業です。結果として、控除・特例を使うことができずに、相続税として支払うべき金額が膨れ上がってしまうという事態に発展するのも考えられます。

理由3.時間の節約になる

相続税の申告期限は「相続が開始してから10か月後」です。期限に1日でも遅れると、延滞税や無申告加算税と言って「遅れたことに対するペナルティ」がかかります。
相続に対する知識があるならまだしも、まったく初めての場合は、何をすればいいかわからないはずです。
しかも、相続以外にもやらなくてはいけないことがたくさんある状態でトラブルなく進めるのはまず不可能でしょう。トラブルなく進めるためにも、税理士に相談する方が無難です。

相続に強い税理士を選ぼう

そして、最後に重要なことを1つお伝えします。税理士は税理士でも「相続に強い税理士」を選ぶのがコツです。税理士によっても、得意な分野と不得意な分野は明らかにあります。。中には、相続の案件をほとんど手がけたことがない人もいるのです。
ご家族やお友達からの紹介であれば確実ですが、つてがない場合は、地域の税理士会に相談するなどして探してみましょう。     

2020/03

税務調査=脱税ではありません。本当のところを解説します

あの映画が思い浮かぶ人もいるはず

いきなりですが、あなたは「税務調査」と聞いて、どんな絵を思い浮かべますか?スーツの人がたくさんやってきて、ゴミを調べたり、朝から聞き込みをしたり、床の下に隠していた金塊を取り出したり……それは、映画の見過ぎです。
故・伊丹十三氏が監督した「マルサの女」という映画があります。この映画は税務調査を描いたものですが、正確には強制調査(査察調査)といって、巨額で悪質な脱税を摘発するために行うものです。強制調査により脱税が確定されれば、検察庁に告発され、刑事事件として処理されます。つまり「脱税で逮捕される=強制調査の結果、脱税が確定される」と考えていいでしょう。
そして、強制調査を行う部署として、国税庁には査察部が設けられています。査察部の通称が「マルサ」と呼ばれているので、「査察部=マルサで働く女性の話」を意味するタイトルがつけられました。
なお、国税庁のホームページによれば、平成30年度の査察事案として告発が行われた事案は121件だったとのことです。このうち、重点事案として告発された=大規模な脱税として告発された件数は、消費税受還付事案16件、無申告ほ脱事案18件、国際事案20件とのことでした。また、告発された事案にかかる脱税分は112億円にのぼります。

基本は「任意調査」。任意だけど断れないので注意

データから見ても、ほとんどの人には強制調査は縁がないと考えていいでしょう。しかし、後ろ暗いことをしていなくても、税務調査は行われるのです。
任意調査といって、犯罪を前提にしないで行う税務調査がこれに当たります。「任意ということは、答えたくなければ答えないでいいのでは?」と思うかもしれませんが、そうでもありません。
たしかに、任意調査は、納税者の同意を得て行うのが前提です。しかし、税務署員には「質問検査権」があります。つまり、必要に応じて調査対象者の事業に関する書類の検査・提示・提出を求めることができるのです。
結論から言うと、任意調査であっても、基本的に断れないものと考えてください。
実際には、税務調査を行う場合は、事前に所轄の税務署から税務調査を行う旨および日程が通知されます。その日程で都合がつかない場合は、変更を申し出ることもできるので大丈夫です。
連絡があった時点で顧問税理士に連絡し、準備すべきものや当日の流れを相談しましょう。しかし、顧問税理士自体がいない場合は、新たに税理士にサポートしてもらうよう頼むのをお勧めします。税務調査まで時間がなくても、スポット契約の形で税務調査に立ち会ってくれる税理士も中にはいるので、あきらめずに探すことが必要です。
     

2020/02     

確定申告を1からわかりやすく解説。期限厳守の本当の理由は?

確定申告とは?

(所得税の)確定申告とは、前年の1年間の収入・支出からその人が払わなくてはいけない税金(所得税)を計算し、税務署に伝えた上で実際に払うことです。会社などに勤めて、給料をもらっている人(給与所得者)であれば、給料から税金が天引きされている(源泉徴収)されているので、例外にあてはまらない限りは、確定申告をする必要がありません。
 一方、自分でビジネスをしている人(個人事業主)は、会社がやってくれるわけではないので、確定申告を必ず行うことになります。また、サラリーマンであっても、以下の条件にあてはまる場合は確定申告が必須となるので、忘れないようにしましょう。
 
 給与収入が2,000万円を超える人
 収入源が複数ある人(給与収入が1か所でそれ以外の所得が20万円以上ある人)
 2つ以上の会社より給与を得ていて、年末調整されていない給与収入と給与及び退職所得以外の所得合計が20万以上の人
 会社で年末調整をしていない人
 年末調整では清算できない控除がある人(医療費控除、住宅取得控除)
 住宅ローン控除を初めて受ける人(2回目以降は年末調整で可能)
 確定申告でしか清算できない収入がある人(事業所得、株式、退職金、年金など)

期限厳守の本当の理由は?

確定申告において、非常に重要になるのが期限を守ることです。所得税の場合、確定申告の期限は毎年2月中旬から3月中旬までとなっています。なお、2020年の場合は2月17日から3月16日までです3月16日までに手続きが完了すればさほど問題はありませんが、万が一遅れた場合、「期限後申告」として扱われます。ペナルティとして「無申告加算税」と「延滞税」を上乗せして払うことになるので、気を付けましょう。
無申告加算税とは「期限通りに申告手続きを終わらせなかった」ことに対する罰金としての税金です。税務署の指摘を受けるまえに自主的に期限後申告した場合は本来納税すべき金額に対して5%が上乗せされます。また、税務署の指摘のあとで期限後申告した場合は、納税額のうち50万円までは10%、50万円を超える部分は15%が上乗せされるので注意しましょう。ただし、以下の条件に当てはまれば、無申告加算税は課されません。

 申告期限後1ヵ月以内に自主的に申告している
 直近5年間に期限後申告がない
 確定申告の期限内(口座振替納付の手続をした場合は期限後申告書を提出した日)に納税は済ませている

延滞税とは「期限通りに納めるべき税金を納められなかった」ことに対する罰金としての税金です。クレジットカードの支払いなどの債務の返済が期日通りになされなかった場合の遅延損害金をイメージするとわかりやすいでしょう。
なお、延滞税をいくら支払わなければいけないかは、国税庁のホームページからシミュレーションできます。
https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/entaizei/keisan/entai.htm

いずれにしても、期限に遅れるのはマイナスでしかないので、早めに準備をし、余裕を持って確定申告を終わらせるようにしましょう。自分じゃできそうにない、と思った時点で税理士などの専門家に協力を仰ぐのも効果的です。

     

2020/01

「スマートフォンで確定申告」

2020年からスマートフォンでも確定申告が可能に。利用できる人の条件は?

利用対象者がさらに拡大!

所得税の確定申告において、電子申告=e-Taxはすっかりおなじみになりました。しかし、従来のe-Taxには、1)パソコンから手続きを進めないといけない、2)カードリーダーライターを買って設定を済ませなければいけない、など、パソコンに不慣れな人の場合はかなり難しいものだったのも事実です。
そこで、2019年1月4日から国税庁は「確定申告書作成コーナー」にスマートフォン専用の画面を設定したほか、カードリーダライタ―がなくても利用できるよう、あらたに「ID・パスワード形式」を提供し始めしました。これにより、かなりe-Taxの利用のハードルが下がりましたが、まだ問題があったのです。
平成30(2019)年分の利用対象者は、次の条件に当てはまる人だけが、スマートフォン専用画面を使えました。

・ 収入:給与所得(年末調整済1か所)
・ 所得控除:医療費控除、寄附金控除
・ 税額控除:政党等寄附金等特別控除

一方、令和2(2020)年分の利用対象者は、ここまで広がっています。

・ 収入:給与所得(年末調整済1か所、年末調整未済、2か所以上に対応)公的年金等、その他雑所得、一時所得
・ 所得控除:すべての所得控除
・ 税額控除:政党等寄附金等特別控除、災害減免額
・ その他の項目:予定納税額、本年分で差し引く繰越損失額、財産債務調書(案内のみ)

ただし、拡大された利用対象者の中に、事業所得・不動産所得・譲渡所得を得ている人は含まれていません。副業をしているサラリーマンの方は、従来通りパソコンから確定申告を済ませないといけないので、注意しましょう。

カードリーダライタなしでe-Taxを使うには?

従来のe-Taxは、マイナンバーカードとICカードリーダライタを購入し、必要な設定を済ませないと進められませんでした。
しかし、平成30(2019)年から、ID・パスワード方式も採用されています。税務署で発行される「ID・パスワード方式の届出完了通知」に記載されたe-Tax用のID・パスワードを使う方法です。ID・パスワードを発行してもらうためには、本人確認書類を持って、住所地を管轄する税務署に行きましょう。
ただし、国税庁によれば、あくまでマイナンバーカードおよびICカードリーダライタが普及するまでの暫定的な措置であるとのことです。これからもe-Taxを使い続けていく予定があるなら、ICカードリーダライタを購入してもいいかもしれません。オンラインショッピングや家電量販店で2,000円台で購入できます。